2009年12月14日

納税資金の活用

相続税の納税資金の考慮

相続対策でこれまでよく採用された方法に、無理な借金により、貸しマンションやアパートの建築をして財産評価額を下げるという方法があります。
この方法には一定のリスクが伴うため、納付する相続税額を節税する対策は、あまりやり過ぎないようにすることをお薦めしております。
より現実的な問題として検討しなければならないのが、財産評価額を下げる対策ではなく、きちんと納税資金に換価できる資産、不動産を用意しておくことによる、納税資金準備対策です。
換金性を高めた資産などを生前から準備しておき、相続発生後に直ちに換金することで相続税を納付しようとするものです。
特に換金しにくい不動産等をあらかじめ流動化、つまり換金化しやすいような資産構成に代えておくことが代表的です。
例えば、すぐに売却できるような更地で持っておくこと、そして、その間の活用を検討することなどです。
注意点は、相続税課税時点において、納税義務者(特に奥様などの配偶者)に、換金性の高い資金がきちんと引き継がれるような配慮を遺産分割との兼ね合いで「遺言書」等で記載しておくことです。
資産を残す側としては、困りがちなケースを想定して、最低限やっておかなければならないことがこの遺言書です。
換金性の高い資産といっても、保有している土地取引には時間がかかるケースも多く、しかも譲渡所得税等の発生もあります。
物納する場合も物件自体が物納要件を満たしていることが求められ、更に認可手続に時間がかかります。
しかも、物納認可が下りないといったケースもあり、これは大きなリスクです。そこで、相続税の納税のための資金準備をしておく必要性が発生するのです。

納税資金が足りない場合の対策は?

短期の対策

納税資金対策として、よくご提案させていただいている方法をご紹介します。

1. 銀行から借入する
2. 死亡退職金・弔慰金を活用
3. 相続資産の売却
4. 納税資金の生前贈与
5. 延納・物納を利用

ただし、短期的というのは、狙ってそうするのではなく、そうしなければならなかった、ということが大半です。
出来る限り計画的に、長期的な視野で取り組まれることをお薦めします。

長期対策

計画的に取り組めることの代表例が、以下の事項です。

1. 生命保険に加入する
2. 土地活用により賃貸収入を得る
3. 賃貸用不動産を譲渡する

どれも税金と不動産のプロフェッショナルにアドバイスを求めた方が無難な対策です。
信頼できるアドバイザーを探しましょう。

納税資金の過不足分析

必要となる納税資金に対して、相続財産と相続人所有の金融資産(現預金・生命保険金・上場有価証券等)がいくら準備できるかを試算し、相続税を支払う能力があるかチェックしてみましょう。
不足していれば、対策をうつことが必要となります。一般に、相続税の支払能力の判定は、【納税資金÷相続税×100】で求めます。
この比率が100%よりも小さければ小さいほど対策が必要です。

納税資金の不足を解消する方法
1. 節税対策により相続税額を軽減すること
2. 納税資金対策により資金を増やすこと

上記、両面からのアプローチが必要です。
納税資金対策では「生命保険」の上手な活用が最も有用です。
終身保険の有期払いで加入すれば、確実に死亡保険金を相続税の納税資金に充当できます。
支払保険料は相続税の分割前払いと考えることもできます。これにより、所有土地等を譲渡または物納することなく、相続税の納税を完結させることもできます。

生命保険などによる対策

正味財産額が3億円以下で、生命保険加入が可能な年齢と健康状態であれば、生命保険の加入だけで相続対策は十分といえます。
大きな節税効果は期待できませんが、少ない保険料負担で必要な相続税の納税資金を準備できれば「小さなコストとリスク」で「大きな効果」を上げることができます。
すなわち、相続財産を無傷で残すために生命保険金を活用し、死亡保険金で相続税をカバーすればよいのです。
相続税の納税資金を生命保険だけで準備することは理論的には可能ですが、被保険者の年齢が高いことからも保険料も相当な金額になります。保険料負担に耐え得る限度という視点から判定しても、課税価格が「3億円」以下の場合に生命保険だけで納税資金の準備が可能と考えられます。

生命保険を活用する

生命保険活用納税資金対策相続が発生した場合、「突然多額の相続税を納付しなければならない。しかし遺産のほとんどは不動産で現預金は少ない」といったケースにおける相続税の納付財源をどう調達するか、比較的簡単な手続きで有効な対策が生命保険への加入です。
人が死亡した場合に突然襲ってくるのが相続税の負担なら、人が死亡したことにより突然現金が入ってくるのが生命保険です。
では、納税資金対策としての生命保険の契約についての注意事項を説明しておきましょう。

1. 保険金額の決め方

万一、相続が発生した場合、どれぐらいの相続税となるのか、この税額計算が必要です。
そして、物納や延納、あるいは不動産の売却といった方法を用いてどれぐらいの税額を納付することが適当かを考慮しつつ、生命保険金で納付したい額を設定したうえで、契約する保険金額を設定しておきましょう。

2. 受取人の決め方

現在あなたの契約しておられる保険証券を一度確認してみてください。受取人はどなたになっていますか?
配偶者になっているケースが多いと思います。
しかし、配偶者の軽減措置がある関係上、相続の多くの場合、配偶者が多額の相続税を負担するケースはほとんど存在しないのではないでしょうか。相続税の納付で困るのは子供達ですから、受取人は「子供さん」とした保険契約がポイントです。
配偶者である妻が受け取った生命保険金で、子供の負担すべき相続税を納めると、妻が子供に「贈与」したことになり、贈与税が課税されることがありますので注意が必要です。

3. 二次相続への備え

配偶者である妻の死亡時に起こる二次相続の場合の相続税の税額計算も、ぜひとも実行しておいてください。そして、奥様を被保険者とし、子供を受取人とする生命保険も必要です。
ただし、保険契約者を奥様とする場合には、奥様に保険料を毎年あるいは毎月掛けていくだけの収入が必要です。
遊休地を活用してショップ経営を始めたり、アパート経営の専従者とするのも方法でしょう。

4. 保険加入の時期

生命保険は、契約時に被保険者の年齢が高くなるにつれ保険料の負担が高くなります。
一年でも早く加入すべきです。
また、保険契約時には健康診断が必要ですが、現在50歳以上の方で、健康上、無条件で保険に加入できた方は50%位であるとのデータを拝見したことがあります。若くして健康なうちに終身保険に加入をしておくというのがよいでしょう。
ただし、お父上が80歳以上であるとか、健康上すでに故障が生じている場合には、被保険者が子供、契約者が父上とした保険契約も次項で述べるように有効です。
以上が納税資金対策としての生命保険についての解説ですが、生命保険はこれ以外にも相続税対策として有効な機能がありますので、ぜひご紹介しておきたいと思います。

生前贈与

生前贈与とは?

生前贈与とは、生前に個人の資産を家族等に譲り渡しておく(贈与する)ことです。
自分の財産を、自分の意思でもって引き継いでもらいたい人に渡すことができ、うまく活用すれば、相続税を減らす効果も期待できます。

贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与により取得した財産(複数からの贈与によって財産を取得している場合はその合計)を対象にして、翌年2月1日から3月15日までに 申告・納付します。

贈与税の基礎控除

贈与税は1人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。

相続開始前3年以内の贈与財産については、相続財産に加えて相続税を計算し、その代わ りに、 前に納めた贈与税額はその相続税額から控除されます。
つまりは死亡時に近い贈与に は、相続税を課すという建て前になっています。

ですからできるだけ早い相続対策が必要になります。

生前贈与による相続税対策

相続税の節税のポイントは、「贈与税の負担をいかに最小限に抑えて、財産を生前に贈与しておくこと」と言われています。

年間1人当り110万円の贈与税の基礎控除を活用します。

中には110万円では、相続対策には少なすぎるという方もいらっしゃいます。

しかし、1人ではなく、複数の配偶者に贈与していけば、金額は大きくなります。
たとえば、配偶者と3人の子供に、それぞれ110万円ずつ10年間贈与していけば、無税で4,400万円までの贈与が可能になります。

ただし、こうした「連年贈与」は「定額贈与」とみなされる可能性があります。
たとえば、毎年110万円ずつ贈与した場合、「向こう10年間にわたり合計1,100万円を贈与するという権利を最初の年に贈与した」と税務局にみなされ、その評価額を課税対象に取り込まれ、高額の贈与税が課される恐れがあります。

こういった状況を回避するには、年によって贈与する財産の内容や金額を変えるなど不規則性をもたせるという方法があります。
このほかにも、「契約書をつくって贈与する」「預金口座からの資金の出し入れにする」などの方法もあります。
贈与の開始時に確定した権利が発生していたとみなされないように、証拠を残す工夫をすることが必要です。

死因贈与契約

死因贈与とは?

死因贈与とは、贈与者の死亡によって、効力を生ずる贈与です。
いわゆる、「俺が死んだら、お前にやるよ。」というような契約です。
遺言が、遺言者の単独行為であるのに対して、死因贈与は、贈与の一種で、二当事者間の契約です。
また、贈与者の死亡によって効力を生じる点で、遺贈と類似し、民法では、死因贈与は遺贈に関する規定に従うとされています。

死因贈与の撤回については、遺言の撤回に関する民法の規定のうち、方式に関する部分を除いて死因贈与の場合にも準用されます。
最高裁では「死因贈与は贈与者の死亡によって贈与の効力が生ずるものであるが、かかる贈与者の死後の財産に関する処分については、遺贈と同様、贈与者の最終意思を尊重し、これによって決するのを相当とするからである。」と述べています。
つまり、死因贈与契約は契約ではありながら、贈与者が一方的に撤回することが可能で、また、この撤回が遺言の方式によってなされる必要はないということです。

死因贈与と登記

不動産の死因贈与については、所有権移転請求権保全の仮登記をすることができます。
死因贈与契約書を公正証書で作成し、その中で「贈与者は、贈与物件について受贈者のため所有権移転請求権保全の仮登記をなすものとし、受贈者がこの登記手続を申請することを承諾した。」旨の記載をしておけば、公正証書の正本又は謄本をもって受贈者がこの仮登記を単独申請ができるので便利です。

また、死因贈与も遺言と同様に、執行者を選任することができます。
執行者の指定がない場合は、所有権移転の登記手続の際に、贈与者の相続人全員を登記義務者として申請することを要しますので、手続が煩雑になります。したがって、この場合は、執行者を指定しておいた方がよいでしょう。

*必ず死因贈与契約を公正証書にしなければならないわけではありませんが、贈与者の死後、受贈者と贈与者の相続人間で摩擦が生じやすいので、公正証書で作成しておく方が安全といえるでしょう。

負担付死因贈与とは?

一般に負担付贈与とは、受贈者が対価というには足らない程度の反対給付をする債務を負う贈与です。
たとえば、受贈者は、贈与者の生存中の生活の世話を負担する代わりに、贈与者の死後に、何がしかの財産の贈与を受ける場合が考えられます。

死因贈与についても、負担付贈与を行うことができます。
上記で、遺言の撤回に関する民法の定めは、方式に関する部分を除いて死因贈与の場合にも準用される旨記載しましたが、負担付死因贈与については、受贈者が約定に従い負担の全部又はそれに類する程度の履行をした場合においては、特段の事情がない限り撤回ができないため、注意が必要です。

また、受贈者の立場から見れば、負担付死因贈与契約締結時に、負担の内容を明確にして、それを誠実に実行するならば、遺言よる遺贈でもらうより負担付死因贈与契約の方が確実なのかもしれません。

遺言状を作成する

遺言書の書き方

遺言は、それぞれ遺言の種類によって法律で書き方が決められています!

せっかく書いた遺言書に不備があると認められません!

自筆証書遺言と公正証書遺言の書き方について説明いたしますが、きちんとした遺言書を作成したいのであれば、やはり司法書士などの専門家にご相談することをお勧め致します。

自筆証書遺言の書き方

・全文を自筆で書くこと
・縦書き、横書きは自由で、用紙の制限はありません。筆記具もボールペン、万年筆など何を使用しても構いません。
・日付、氏名も自筆で記入すること。
・捺印は認印や拇印でも構いませんが実印が好ましいでしょう。
・数ページに渡る場合は、全てのページに契印がされていること。
・加除訂正する時は、訂正個所を明確にし、その個所に捺印の上署名すること。

公正証書遺言の書き方

・証人2人以上の立会いのもと公証人役場へ出向くこと(公証人に来てもらうことも可能です)。
・遺言者が遺言の内容を公証人に口述すること。
(聴覚・言語機能障害者は、手話通訳による申述、または筆談により口述に代えることができます。)
・公証人がその口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、または閲覧させること。
・遺言者および証人が筆記の正確なことを承認したうえで、各自が署名捺印すること。
・公証人がその証書を法律に定める手続きに従って作成されたものである旨を付記して、これに署名捺印すること。

証人・立会人の欠格者について

遺言執行者は、証人になることが認められていますが、未成年者、推定相続人、受遺者及びその配偶者、及び直系血族は証人にはなれません。また、公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び雇用人も同様です。

特別受益分

特別受益とは生きているうちに、被相続人(亡くなった人)から特別の援助を受けた場合(商売の資金援助、マイホーム資金など)に、これを無視して、相続分を計算するのは、不公平になるため、被相続人が生きている間にもらった分は、相続分の前渡しとして、計算することです。
具体的には相続される人(被相続人)には、奥さんと、長男と次男がいるとします。
長男にのみ、生きている間に、マイホーム資金として1,000万円を贈与していて、次男には、贈与はなっかたとします。
そして、遺産が、3,000万円だった場合、3,000万円に1,000万円を足した、4,000万円を分割する相続財産として、遺産分割します。
これを、法定相続分でわけると、奥さんが2分の1の2,000万円、長男が4分の1の1,000万円、次男が4分の1の1,000万円となります!
しかし、ここで、長男が1,000万円をマイホーム資金として、提供を受けていたので、これを差し引きます。
よって、長男の相続分は0円ということになります。特別受益分が最後に差し引かれます。

寄与分

寄与分とは生前、被相続人に対し特別の働きをした場合の相続できる権利のことです。

1. 相続人の中に、被相続人の事業を手伝った、金員などの財産の給付をした、病気を看病した、その他財産の増加などに特別の働きをした者がいる場合は、その者の働きの評価額(寄与分)を共同相続人間で協議して決定し、その評価額を相続財産から引いた残額を「遺産」と仮定して相続分を計算します。

2. 特別の働きをした相続人は、「遺産」の法定相続分にあらかじめ引いておいた評価額(寄与分)を加えた分が相続分となります。

3. 寄与分の存在やその額について相続人間で話し合いがつかない場合は、特別の寄与をした者は家庭裁判所に審判を求めることができます。

4. 家庭裁判所は、寄与の時期や、方法、程度、遺産の額などといった一切の事情を考慮して寄与分を決めます。

5. 寄与分の額は、相続開始時の財産の価格から、遺言により遺贈された価格を差し引いた額を超えることはできません。

遺留分

遺留分とは相続人に保証されている相続財産の権利のことです!

遺言書を作成すれば、法定相続人以外の者に全財産を遺贈することもできます。
しかし、それでは残された家族が住む家を失い、生活もできなくなるという事態も起こり得ます。

こうした、あまりにも相続人に不利益な事態を防ぐため、民法では、遺産の一定割合の取得を相続人に保証する『遺留分(いりゅうぶん)』という制度が規定されています。

相続人の遺留分を侵害する遺言も、当然に無効となるわけではありません。
遺留分を取り返す権利を行使するかどうかは相続人の自由であり、『自己の遺留分の範囲まで財産の返還の請求する遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせきゅう)』がなされるまでは、有効な遺言として効力を有します。

しかし、遺留分を侵害された相続人が、遺留分減殺請求権を行使すると、受遺者・受贈者は、侵害している遺留分の額の財産を相続人に返還しなければならず、返還する額をめぐって訴訟になるケースも多く見られます。

したがって、遺産をめぐる争いを防ぐ意味でも、相続人の遺留分を考慮したうえで遺言書を作成したほうがよいでしょう。

■ 相続財産に対する各相続人の遺留分

(1)直系尊属のみが相続人であるときは、被相続人の財産の3分の1
(2)その他の場合は、被相続人の財産の2分の1

兄弟姉妹には遺留分の権利はありません。
具体的な配分については相続人の内訳により異なりますので税理士等専門家にご相談下さい。

トラブルの原因

相続を「争族」トラブルにさせないでください!

普通、家族同士の場合、かなり性格や価値観が違っていても、中心となる親が生きている間は、そうあからさまにいがみ合ったりはしないものです。ところが、親が亡くなっていざ相続となると、相続税のあるなしにかかわりなく、遺産分割で収拾がつかなくなるケースが珍しくありません。相続が「争族」といわれるゆえんです。
争いの原因はいろいろありますが、今回は主に個々の相続人の態度や行為が問題となるケースを取り上げてみます。

相続人の1人が財産を独占する!

家業を継ぐ長男が、有無を言わせず強引に財産を独り占めするとか、親の面倒を見ていた子供が財産の大半を要求するケースです。
表向きの理由としては、親孝行の度合いや家業に対する貢献度が多いようですが、当然、その他の兄弟姉妹は黙っていません。
自分の法定相続分を主張し正面衝突することになります。

財産の全体像を明かさない!

判断力が衰えた親の財産の管理を、同居中の子供が代行するということはよくあることですが、不正に貯金を下ろして隠したりして、相続開始時に遺産の全体額がはっきりしないケースがあります。
遺産の額が不明な場合、家裁に調停を申し立てても、遺産の範囲が特定していないため調停作業ができません。
そこで、調停を一旦中断して遺産確定の民事裁判を提起し、その判決の結果を待って調停となることから、時間と費用がかかることになります。

遺産分割協議に応じない!

感情のもつれなどから、遺産分割協議に応じない相続人が1人でもいた場合は、遺産分割ができません。
遺産分割の成立には、相続人全員が合意し、遺産分割協議書に全員の実印の押印および自署が必要なためです。
また、分割協議に参加しない相続人がいると、預金を引き出すことができなくなります。
金融機関は、相続人全員が自署した同意書がないと、預金を解約してくれません。
中には、相続人同士の仲が悪く、話し合いの場所すら決まらないというケースもあります。
こうした場合は、初めから相続人同士による解決が不可能な状態にあるわけですから、家裁において調停・審判が必要となります。

欲張った主張する人がいる!

よく、最初は遺産を期待していない様子だったのに、遺産の額を知った途端、急に態度を変え欲張った主張をする相続人がいます。
得てしてこのタイプは、それまで親の面倒を見たことがなく、兄弟に迷惑をかけてきたという人に多く、頑固に法定相続分を主張する傾向があります。こういう相続人がいると、まとまるものもまとまりません。

税務調査

税務調査とは、相続税納税者が申告した内容が正しいものか、申告漏れなどがないかをチェックするために行われるものです。

日本の納税制度は自己申告が原則となっており、自分が納める税金について、税法に基づいて自分で財産額と税額を計算し、自分で申告することが義務付けられています。

しかし、すべての納税者が正確な申告を行っているとは限りません。

そこで、申告納税制度の公正な適用を維持する上で、 納税者が申告した内容が正しいかどうかを確認することが必要となります。

そのために行われるのが税務調査なのです。

さて、相続税の税務調査はどうなのか?

相続税の申告書を提出すると、半年から2年以内に税務調査が行われるケースが多いようです。

毎年、申告書の提出は4万5000件ほどありますが、このうち1万3000件程度に税務調査が入ります。

つまり、約30%の調査割合ということになります。これは法人税4%、所得税1%の実地調査率とは大違いです。

相続税の申告をした方は、その後、高確率で税務調査が入ると言うことを頭にいれておくべきでしょう。

その内容は、所得税や法人税の調査と違って「取りあえず確認のために調査を行う」というレベルではありません。

その証拠に相続税の調査が行われた場合は、約9割の確率で申告漏れが発見されています。

具体的には子供や孫の名前だけを借りた「名義預金」といわれるものがあります。

事前の銀行調査や郵便局調査により遺産の申告漏れを発見してから税務調査に来るため、 このような高確率での修正申告につながるのです。

相続税の申告

相続税は、「相続開始を知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10ヶ月以内」に納付しなければいけません。

被相続人の住所の所轄税務署に申告書を提出します。

この期限内に申告・納付しなかった場合は、「加算税・滞納税」の対象になりますので注意が必要です。

遺産分割は時間がかかることが多いのも現実ですが、法律では10ヶ月と定められていますので、遺産分割がまとまらないので相続税が払えないといった、各自の事情は考慮されません。

もしもこの期限内に遺産分割がまとまらなかった場合は、とりあえず未分割のまま法定相続分で相続したとして申告、納税し、後日、改めて申告することとなります。

相続税早見表

相続税がどれくらいかかるのかと疑問に思われる方も多いかと思います。
下記の相続税早見表でおおまかな相続税額をご確認下さい。

配偶者がいる場合

※ 単位は千円です。
※ この表は、配偶者が遺産の2分の1を取得した場合の計算です。
※ 税額控除は、配偶者の税額軽減以外にはないものとしました。

相続税早見表【配偶者がいる場合】

配偶者がいない場合

※ 単位は千円です。
※ 法定相続人の中に相続を放棄した者があるときは、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数。
※ 養子がある場合には、養子の数は、実子がある場合には1人、実子がない場合には2人に制限されます。
(ただし、税負担回避の養子は認められません。)
※ 負担率は小数点以下、税額は1万円未満を四捨五入しました 。

相続税早見表【配偶者がいない場合】

控除の種類

相続税による税額控除は6種類あり、税額控除が適用されると、その分については控除されます。

つまり当てはまるものは全て適用を受けたほうがいいでしょう。

1. 配偶者控除(配偶者の税額軽減)

1. 配偶者が相続する割合が法定相続分以下の場合は相続税はかかりません。
2. 配偶者が相続する財産が1億6,000万円以下の場合は相続税はかかりません。
のどちらか高い方になります。
但し、この制度を利用するためには、原則として期限内(10ヶ月以内)に遺産分割協議を完了させて、相続税の申告と納付を済ませておかなければなりませんのでご注意ください。

2. 未成年者控除

法定相続人に未成年者がいる場合は、未成年者が20歳に達するまでの年数1年につき、6万円が控除されます。
※相続開始時の年齢が1年未満の端数は1年として計算します。
6万円×(20歳-相続開始時の年齢)=未成年者控除額

3. 贈与税額控除

贈与税額控除とは、贈与税と相続税の二重課税を防止するために設けられている規定です。
相続開始前3年以内の贈与財産は、相続税の対象として加算されますが、贈与税を既に払ってる場合には相続税から控除できます。

4. 障害者控除

1. 法定相続人が一般障害者の場合は、対象者の年齢が満70才になるまでの年数1年につき6万円が控除されます。
6万円×(70歳ー相続開始時の年齢)=一般障害者控除
2. 法定相続人が特別障害者の場合は、対象者の年齢が満70才になるまでの年数1年につき12万円が控除されます。
12万円×(70歳ー相続開始時の年齢)=特別障害者控除
※相続開始時の年齢が1年未満の端数は1年として計算します。

5. 相次相続控除

相次相続とは、相次いで相続が起きる事をいい、短期間に相次いで相続があった場合における加重負担を防ぐために設けられています。
10年以内に2回以上の相続が続いたときは、前回の相続にかかった相続税の一定割合を、今回の相続税額から控除できます。

6. 外国税額控除

相続により取得した財産が国外にある場合、その国外財産について相続税に相当するものが課税されている場合は、二重課税を防止するために国内で一定の税額を相続税額から控除できます。

相続税とは

相続税とは、相続または遺贈により財産を取得する際に、一定以上の財産がある場合に相続する遺族に課せられる税金です。
相続税には、基礎控除があります。

遺産の評価額から故人の債務(借金など)や葬儀費用を控除した課税価格の合計が、基礎控除の金額以下であれば相続税はかかりません

相続で得た財産 - 債務や葬式費用 = 課税価格の合計額≦基礎控除額
※基礎控除額とは3,000万円 + 法定相続人数 × 600万円

計算例

相続で得た財産 9,000万円
借金 0円
葬儀にかかった費用 500万円
相続人 4人

3,000万円 + 600万円×4人 = 5,400万円(基礎控除額)
9,000万円 – (0円+500万円) = 8,500万円(課税価格合計)

8,500万円(課税価格の合計) ≧ 5,400万円(基礎控除額)

この場合、課税対象額の合計が基礎控除額よりも多いため、相続税が発生します

相続税の計算は、課税遺産総額を各相続人が民法の規定により法定相続分に応じて取得したものとみなして、各人ごとの相続税を求めます。これらを合計したものが相続税の合計となります

ただし、実際の遺産の持分は法定相続通りにはいかないこともあります。

算出が難しい場合もございますので、専門家に相談することをおすすめします

手続きに必要な書類

相続では、思った以上に多種多様な確認書類を必要とします!

相続財産を誰にどのように分けるのか、それについてすべての相続人が合意したことを証するため相続人全員の印鑑証明が必要です。
遺産分割協議書への署名捺印が、本人によってなされていることを証するため相続手続きを進めると言っても、不動産・預金・貯金・株券など相続財産の名義変更を行うには、必要とされる書類を揃えるしかありません。
いくら、「死んだおじいちゃんに可愛がってもらっていた!」と手続き窓口で叫んでもだれも相手にしてくれません。

では、どんな書類が必要とされているのでしょうか?
不動産でも預貯金でも大きく分類して3つの書類が必要とされています。

1. 相続する権利のある人(法定相続人)は、だれかを確認できる書類

被相続人の出生から死亡までの戸籍など、および相続人の戸籍・住民票など
戸籍等の収集は、手間と時間を要します。
しかし、最初にこれをやっておかないと、思わぬ相続人が後で現れたりして大事件になるケースもあります
いずれ手続きで必要となりますので、早めの準備をお勧めしています。
このホームページにもやり方を解説してありますが、私どもの事務所でも相続関係図の作成を含めお手伝いできます。
実際、役所へ出向いてご自分ではじめたものの、たいへんな作業であることがわかりご依頼されるケースが多くあります。

2. その遺産をだれが相続するようになったかを証明する書類

遺産分割協議書、遺言書など「遺産分割協議書であれば相続人全員の実印・印鑑証明が必要」などシビアな要件が設けられているケースが多く、手続き窓口でよく確認することが大切です。
金融機関には、相続人全員の実印・印鑑証明添付のうえ代表相続人(相続人を代表して相続財産を金融機関より受ける人)を選任するという旨の書式が準備してあります。

3. 名義変更の申請書

名義変更する窓口により申請書は異なります。
銀行ごとで異なる書式です。
例外もありますが、基本的にこの3種類の書類の準備が必要なのです。
それぞれの窓口で決まった書式が準備されているのが普通ですから、あまり神経質になる必要はありません。

不動産の名義変更

法務局では誰でもその不動産が誰の物であるか、担保などがついているかどうかが記載されている登記簿を閲覧できるようになっています。
相続が起こった場合、被相続人名義の不動産登記簿を相続人名義に変える手続きをしなくてはなりません。

なお、不動産の名義を変更せずに、トラブルになることがよくありますので、速やかに名義変更の手続きを行うことをお勧めいたします。

以下で不動産の名義変更の手続きを解説していきます。

大まかな手続きの流れ

遺産産分割協議の終了

登記に必要な書類の収集

登記申請書の作成

法務局への登記の申請

手続きのすすめ方

1. 登記に必要な書類の収集

登記に必要な書類はどのように遺産分割の協議が行われたかによって必要な書類が異なってきます。具体的には以下のとおりです。

法定相続人が一人の場合または法定相続分で相続をする場合

・ 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍など
・ 被相続人の最後の住所を証する書面(住民票の除票、戸籍の附票など)
・ 法定相続人の戸籍謄本
・ 相続人の住民票
・ 相続する不動産の固定資産税評価証明書

遺産分割協議で決めた割合で相続をする場合

・ 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍など
・ 被相続人の最後の住所を証する書面(住民票の除票、戸籍の附票など)
・ 法定相続人の戸籍謄本
・ 法定相続人の住民票
・ 相続する不動産の固定資産税評価証明書
・ 法定相続人の印鑑証明書
・ 遺産分割協議書

2. 申請書の作成

登記の申請書の作成については状況によって複雑に変化するものなので、ここでの解説は控えさせていただきます。

3. 登記の申請

登記の申請書に集めた書類をまとめて、相続する不動産を管轄する法務局(登記所)に登記の申請をいたします。
提出した書類に不備がなければ1週間くらいで登記が完了し、不動産の名義が変更されます。

4. 登記の費用

登記を申請する際には税金(登録免許税)の納付が必要になります。
なお、そのときに必要になる税金(登録免許税)は固定資産税評価証明に記載されている不動産の価格に1000分の4を乗じた価格となります。(100円未満は切り捨てとなります)

なお、司法書士などの専門家に登記の依頼をした場合には、登記申請書の作成、法務局への登記の申請に加え、必要書類の収集などすべての手続きを司法書士に依頼できます。

なお、1つの土地を相続した場合に相続人で1つの土地を複数の土地に分ける場合(相続したのが200㎡の土地でAはその土地の南側100㎡、Bはその土地の北側100㎡という場合です。)には相続の登記の申請をする前に、その土地の測量を行い1つの土地を複数の土地に分ける「土地分筆登記」の申請が必要になります。

その手続きのあとに各相続人名義に相続の登記を申請することになります。

動産の名義変更

生命保険の受取手続

生命保険は請求しなければ、絶対に支給されません!

一般的に生命保険として思い浮かぶのは各生命保険会社の「生命保険」のことですが、そのほかに郵便局の「簡易保険」、勤務先での「団体生命保険」、会社経営者や幹部のための「経営者保険」などがあります。

どの生命保険でも請求人による支払請求の手続きがなされないかぎり、生命保険金は支払われません

一般的には、記入した死亡保険金請求書と一緒に、生命保険の証書、保険会社所定死亡診断書、被保険者(死亡した人)の除籍抄本もしくは住民除票、保険請求人の印鑑証明と契約時の印鑑、戸籍謄本、振込先口座番号、請求人の身分を証明するものを添えて、生命保険会社などへ提出します。

死亡保険金は、どんな理由があるにせよ2年以内(法規では2年以内と定められていますが顧客のために、3年以内としている保険会社も多い)に手続をしないと保険金を受け取る権利がなくなります。

提出した書類の誤りがなければ、保険会社から1週間ほどで保険金が支払われます。

また、勤務先などで、本人が知らないうちに団体生命保険に加入していることもあります
このような団体生命保険は、会社の急な支出に備えたり、慰霊金に当てる目的で、保険金の受取人が個人ではなく勤務先になっているケースも多いようです。

この点も一応勤務先に確認しましょう。

生命保険加入者(被保険者)が死亡した場合は、保険金受取人は「死亡保険金の受け取り手続」を行わなければなりません。

保険金が受け取れるかどうかは保険の種類、特約の種類などによりますので、早めに保険会社、代理店に連絡しましょう。

ちなみに「生命保険の死亡保険金」は、受取人が特定されている場合は受取人の財産とみなされますので、遺産分割における「相続財産」に含みません。

■ 生命保険金(死亡保険金)の受け取り手続

1. 保険金受取人が保険会社(代理店)へ通知
2. 生命保険会社から必要書類等が送付
3. 保険金受取人が必要書類等を提出し、請求手続きを行う
4. 生命保険会社による支払い可否判断
5. 支払い可と判断されると保険金受取人が保険金を受け取る

■ 生命保険金(死亡保険金)が受け取れない場合

・ 保険会社が定めた期間内の自殺。
・ 契約者、死亡保険金受取人が故意に被保険者を死亡させた時。
・ 戦争その他の変乱による死亡。

■ 死亡保険金を受け取る際に必要な書類

・ 保険金請求書(保険会社所定の物)
・ 保険証券
・ 死亡診断書
・ 故人の戸籍謄本
・ 保険金受取人の印鑑証明書
・ 保険金受取人の戸籍謄本
※必要書類は各保険会社、または保険の内容によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。

銀行口座の名義変更

相続が発生すると、すべての口座は凍結します!

被相続人の名義である預貯金は、一部の相続人が預金を勝手に引き出すことを防止するために、銀行などの金融機関が被相続人の死亡を確認すると、預金の支払いが凍結されます。(一部葬儀費用は出してもらえる場合もありますが)

凍結された預貯金の払い戻しを受けるための手続きは、遺産分割が行われる前か、行われた後かによって手続きが変わります。

おおよその手続は以下のとおりです。
(なお、金融機関によって必要な書類等は異なりますので、それぞれの金融機関に直接お問い合わせください)

■ 遺産分割前の場合

遺産分割前の場合には、以下の書類を金融機関に提出することになります。
1. 金融機関所定の払戻し請求書(相続人全員の署名・実印による押印がされたもの)
2. 相続人全員の印鑑証明書
3. 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までのものすべて)
4. 各相続人の現在の戸籍謄本
この他、金融機関によっては用意する書類が異なる場合もありますので、直接問い合わせてみましょう。

■ 遺産分割後の場合

遺産分割協議に基づく場合、調停・審判に基づく場合、遺言書に基づく場合によって必要な書類が異なります。

■ 遺産分割協議に基づく場合

以下の書類を金融機関に提出することになります。
1. 金融機関所定の払戻し請求書(申立人の署名・実印による押印がされたもの)
2. 相続人全員の印鑑証明書
3. 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までのものすべて)
4. 各相続人の現在の戸籍謄本
5. 被相続人の預金通帳と届出印
6. 遺産分割協議書(相続人全員が実印で押印)
この他、金融機関によっては用意する書類が異なる場合もありますので、直接問い合わせてみましょう。

■ 調停・審判に基づく場合

以下の書類を金融機関に提出することになります。
1. 家庭裁判所の調停調書謄本または審判書謄本(いずれも家庭裁判所で発行を受けることができます)
2. 預金を相続した人の戸籍謄本と印鑑証明書
3. 被相続人の預金通帳と届出印
この他、金融機関によっては用意する書類が異なる場合もありますので、直接問い合わせてみましょう。

■ 遺言書に基づく場合

以下の書類を金融機関に提出することになります。
1. 遺言書
2. 被相続人の除籍謄本(最後の本籍の市区町村役場で取得できます。)
3. 遺言執行者の印鑑証明書
4. 被相続人の預金通帳と届出印
この他、金融機関によっては用意する書類が異なる場合もありますので、直接問い合わせてみましょう。

株券の名義変更

株式の名義変更は被相続人名義の株式が、上場株式か非上場株式かによって手続が異なります。

■ 上場株式の名義変更の手続

上場株式は証券取引所を介して取引が行われていますので証券会社と相続する株式を発行した株式会社の両方で手続をすることになります。

■ 証券会社における手続

証券会社は顧客ごとに取引口座を開設していますので、取引口座の名義変更手続を行います。
取引口座を相続する相続人は、以下の書類を証券会社に提出して名義変更しましょう。
1. 取引口座引き継ぎの念書
2. 相続人全員の同意書(証券会社所定の用紙)
3. 相続人全員の印鑑証明書
4. 被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍
5. 相続人の戸籍謄本・株式を発行した株式会社における手続

証券会社で取引口座の名義変更手続が終了した後は、株式を発行した株式会社の株主名簿の名義変更手続をすることになります。
この手続に関しては証券会社が代行して手配してくれます。

■ 非上場株式の名義変更手続き

この場合取引市場がないので、それぞれ会社によって行う手続が変わります。
発行した株式会社に直接問い合わせましょう。

遺族年金

遺族年金は残された遺族の生活を保障してくれる制度です。

疾病や負傷によって、不幸にして亡くなった場合に、亡くなった方の年金受給権を遺族が引き継ぐといった形で、その遺族などの生活保障として「遺族年金」が各制度から支給されます。

あくまでも遺族の生活保障という意味合いの年金ですので、遺族には一定の要件があります。

家計を支えていた世帯主を失い、子供を養育している妻には手厚い制度であったり、残された18歳未満の子供には加算があったりします。

また、本人が自身の老齢年金や障害年金を受給する事となった場合には、支給停止となることや、併給されても制限を受けることがあります(1人1年金の原則)。

併給の場合には、遺族自身の選択によって、より有利なものを選ぶことができるようになっています。
ここでは、遺族年金の種類について見ていきましょう。

■ 遺族基礎年金

国民年金からの支給です。
一定の要件を満たした被保険者や老齢基礎年金の受給権者が死亡した場合に、その者の「子のある妻」又は子に支給されます。
年金額は、792,100円+子の加算額。(平成21年度)

■ 寡婦年金

国民年金からの支給です。
1号被保険者の夫が、老齢基礎年金を受けることなく死亡した場合に、「子のない妻」(65歳未満)に支給されます。
65歳からは妻自身の老齢基礎年金が支給されますので、寡婦年金は支給されません。
年金額は、死亡した夫が受け取るはずの老齢基礎年金額の4分の3に相当する額。

■ 死亡一時金

国民年金からの支給です。
1号被保険者であった者が、年金を受け取ることなく死亡した場合に、遺族に支給されます。
遺族の範囲は、生計を同じくしていた、配偶者 – 子 – 父母 – 孫 – 祖父母 – 兄弟姉妹のなかで、先順位のものに支給されます。
寡婦年金を受けることができるときは、選択により一方が支給されます(両方支給されることはない)。
死亡一時金の額は、保険料の納付期間により、120,000円から320,000円の範囲で支給されます。

■ 遺族厚生年金

厚生年金保険からの支給です。
厚生年金保険の被保険者又は被保険者だった者が死亡したときに、その遺族に支給されます。
遺族の範囲は、死亡した者によって、生計を維持されていた、配偶者子 – 父母 – 孫 – 祖父母で、先順位のものに支給されます。
年金額は、死亡した者の老齢厚生年金の額の4分の3相当額。

手続きの全体像

相続発生後、残された遺族の方は、各種様々な手続きをしなければなりません。
それは、死亡届や免許証の返還など、ご自身で進められる手続きから、不動産登記や相続税の手続き、財産評価、遺言の取り扱いなど、専門家が係わるべき手続きまで様々なものがあります。
また、それぞれの手続きに、「いつまでにやってください」という異なる期限が細かく設定されています。
これをやらずにいると、思いがけない問題が発生してしまいます。

例えば、
・ 期限を過ぎてしまい、受け取れるものが受け取れなくなった。
・ 余計な費用が掛かり、結果的に損をすることになってしまった。
・ 自分で出来る手続きを思いつくままにやってみたら、何度も同じ書類を集めるはめになったり、役所にたらい回しにされて無駄な労力ばかり掛かった。
・ 一応専門家にお願いしたが、相続専門でない資格者であったため、余計な時間がかかった上、高額な費用を請求された。
といった話をよくお聞きします。

本来であれば、静かに供養したいと思っているのに、手続きに追われて疲れ切って、葬儀の準備がまともに出来なくなってしまったり、費用ばかりが気になって、相続手続きのスケジュールを忘れてしまったり・・・と、相続手続きに追われるあまりに、多くの方が大変な思いをされてしまっています。
そのようなことにならないためには、
1. 自分がやるべき手続きのリストを作る
2. リストに締め切りを入れていく
3. 自分でやる事と、専門家に依頼する分を分ける
これらのことをしっかりと順序良くこなす必要があります。
代表的な手続きを表にしましたので、是非参考になさってください。

届出・手続き 説明 期限 手続き先
死亡届 「死亡診断書」とセットで 7日以内 亡くなった人の本籍地または届出人の住所地の市町村役場
死体火(埋)葬許可申請書 火葬・埋葬の許可をとるとき 7日以内
世帯主変更届 世帯主が死亡したとき 14日以内 住所地の市区町村役場
児童扶養手当認定請求書 世帯主が死亡して、母子家庭になったとき 世帯主変更届と同時 住所地または本籍地の市区町村役場
復氏届 配偶者の死亡後、旧姓に戻りたいとき 必要に応じて 住所地または本籍地の市区町村役場
姻族関係終了届 配偶者の死亡後、配偶者の親族と縁を切りたいとき 必要に応じて 住所地または本籍地の市区町村役場
子の氏変更許可申請書 配偶者の死亡後、子の姓と戸籍を変えたいとき 必要に応じて 子の住所地の家庭裁判所
改葬許可申立書 お墓を移転したいとき 必要に応じて 旧墓地の住所地の市区町村役場
準確定申告 1月1日から死亡日までの所得を申告する 4ヶ月以内 亡くなった人の住所地の税務署
運転免許証 返却 速やかに 最寄の警察署
国民健康保険証 変更事項の書き換えをする 速やかに 住所地の市区町村役場
シルバーパス 返却 速やかに 住所地の市区町村役場
高齢者福祉サービス 利用登録の廃止 速やかに 住所地の福祉事務所
身体障害者手帳・愛の手帳など 返却。無料乗車券などがあれば、一緒に返却 速やかに 住所地の福祉事務所
勤務先(在職中の場合)
死亡退職届 提出 速やかに 勤務先(手続きは勤務先で行う)
身分証明書 返却 速やかに 勤務先(手続きは勤務先で行う)
退職金 受け取る 速やかに 勤務先(手続きは勤務先で行う)
最終給与 未支給分があれば受け取る 速やかに 勤務先(手続きは勤務先で行う)
健康保険証 返却 速やかに 勤務先(手続きは勤務先で行う)

遺産分割協議

遺産分割協議の進め方

遺産分割協議は全員参加が大原則です。
相続人の確定、相続財産の確定が終わると、いよいよ遺産の分割方法について協議します。
相続財産をどのように分割するかは、遺言書がある場合にはそれに従います。(ただし、相続人全員の協議がある場合は、遺言と違う内容で相続財産を取得することも出来ます)
遺言書がない場合には、誰がどの財産をどれだけ相続するかを相続人間で話し合って決めることができます。
この話し合いを「遺産分割協議」といいます。
遺産分割協議は、通常次のような流れで進めて行きます。

1. 相続人を確定する

遺産分割協議は、相続人全員参加での承認が原則必要となります。
・戸籍謄本を取得して相続人を確定する。
・相続人の中に、未成年の子とその親権者がいる場合には、家庭裁判所に申立をして、特別代理人の選任という手続が必要です。
・相続人の中に行方不明者がいる場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申立てる方法と、失踪宣告の申立をする方法があります。

2. 相続財産の調査

相続財産を調べて財産目録を作成します。借金・クレジット・保証債務などのマイナス遺産も漏れなくチェックすることが大切です。

3. 相続財産の評価

土地、建物、株式などについて、それぞれの評価基準に基づき評価します。

4. 寄与分の協議

被相続人が生存中に、財産の維持や増加に特別に寄与した相続人がいる場合には、その寄与分を先に協議して差し引き、残りの財産について分割協議します。

5. 遺産分割協議

相続税の申告は死亡の日から10ヶ月以内ですが、遺産分割協議に期限はありません。

遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書はモレがないように作成しましょう。
遺産分割協議書には書き方のポイントがあります。

1. 用紙

紙の大きさに制限はありません。

2. 押印

遺産分割協議書が数ページになるときは、相続人全員の契印が必要です。
登記所では、少しの記入ミスでも訂正を求めますので、できれば捨印があった方がいいでしょう。
捨印を押すのを嫌がる相続人がいるときは、チェックして間違いがないことを確認しましょう。
署名の後ろの実印の押印は、鮮明に押印する必要があります。
※遺産分割協議書に限らず、適当に押印する人がいます。
実印を押印する以上、印鑑証明書を付けるわけですから、鮮明に押印しましょう。

3. 不動産の表示

「不動産の表示」の記載は、登記簿(登記記録)に記載されているとおりに記載しましょう。
登記所は、登記簿(登記記録)に記載された不動産の内容でしか、判断しません。

4. 日付

遺産分割協議書の相続人が署名、押印した日付は、実際、遺産分割の協議をした日、あるいは、最後に、署名した人が、署名した日付を記入するようにしましょう。

5. 相続人の住所・氏名

必ず、相続人本人に署名してもらいましょう。
住所、氏名の記入は、印鑑証明書に記載されているとおりに記入することが、後々の紛争予防に役立ちます。

遺産分割協議書の注意点

遺産分割協議は、全員の話し合いがないと無効になります。
遺産分割協議書には決まった書式(書き方)はありませんが、いくつか注意点がありますのでおさえておきましょう。

協議は法定相続人全員で行わなければなりません。

遺産分割協議は法定相続人全員で行わなければ効力がありません。
戸籍調査の上、間違いの無いように注意してください。
全員の協議ですが、『全員が一堂に会して協議する』事までは要求されません。全員が承諾した事実があればそれでよいのです。
現実に、遺産分割協議書(案)を作成し、『この内容でよければ実印を押してください』と他の相続人に持ちかける方法がよく取られます。

法定相続人全員が署名・実印の押印をする。

厳密には署名ではなく記名でもかまいませんが、後々の紛争・トラブルを防ぐためにも署名するようにしてください。
印鑑は実印を使わないと、不動産登記や銀行手続ができません。

財産の表示方法にも注意が必要です。

不動産の場合、住所ではなく登記簿どおりの表記にしてください。
銀行等は、支店名、口座番号まで書いてください。契印が必要となります。
遺産分割協議書が用紙数枚にわたる場合、法定相続人全員の実印で契印してください。
遺産分割協議書には、実印の押印が必要ですが、それと共に印鑑証明書も添付してください。

遺産を確定する

相続財産には遺産分割の対象になる相続財産(いわゆる相続財産)と相続税の課税対象になる財産(いわゆるみなし相続財産)、そしてそのどちらにもならない財産(祭祀財産)の3種類があります。

確認できた財産がどれに当たるかで、扱いが異なりますので注意しましょう。

相続財産

亡くなった方が所有していた家、現預金、有価証券などの一般的な財産のことです。

手持ち動産

主な調査方法

現金、宝石、貴金属、骨董品など 亡くなった方の住まい、別荘等の家捜し、銀行の貸金庫の確認など
銀行預金、郵便貯金、株、債券等の金融資産 預貯金通帳、金融機関・証券会社からの郵便物で目星を付けて窓口で確認。
取引先が広範な場合は住所地近辺の主な金融機関をしらみつぶしに当たる。
住まい、収益不動産、別荘などの不動産 固定資産税納税通知書等で所在を確認後、当該自治体発行の名寄せ帳を取り寄せる

みなし相続財産

・亡くなった方が自分にかけていた子供を受取人に指定してある生命保険の保険金、退職金規定で配偶者が受け取ることになっている死亡退職金など
・取扱い
遺産分割の対象にならないが相続税の対象になる。相続を放棄しても受け取れる。

祭祀財産

・亡くなった方が所有していた墓所、仏壇など祖先を祭るために使われているもの
・取扱い
亡くなった方の指定、地方の慣習、家庭裁判所の審判等により、相続人の誰か一人が受け継ぐ。
相続税の課税対象にならない財産目録の作成
財産調査の結果は財産の名称、所在、金額など、目録にまとめます。また、調査の途中で管理や保全が必要な財産が見付かった場合は、早急に適切な管理・保全の手当てをしておきます。

相続人を確定する

相続人が誰になるのかを、『間違いのないように!』調査してください!

相続人が誰かは民法で決められています。
遺言や死因贈与契約がなければ相続人以外の人が相続財産を取得することはありません。
相続人以外の人はその相続に関しては部外者と言うことになります。

法定相続人

・配偶者

常に相続人になります。

・子(養子含む)

第一順位の相続人になります。子がすでに亡くなっていて、その代襲者がいる場合は、代襲者が第一順位の相続人になります。

・直系尊属

(亡くなった方の父母、祖父母など)
子がない場合は、直系尊属のうち、存命でもっとも親等が近い者が第二順位の相続人になります。

・兄弟姉妹

子及び直系尊属がいない場合、兄弟姉妹が第三順位の相続人になります。兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合、その子(甥、姪)が代襲して第三順位の相続人になります。
※甥、姪が亡くなっていてもその子は相続人になりません。
※配偶者と子(代襲相続人を含む)以外の相続人は、先順位の相続人がいない場合にのみ相続人になります。
つまり、実際に相続人として相続に関係する人の組み合わせは次の形しかありません。
・配偶者と子・養子(代襲相続人を含む)
・配偶者と両親(またはもっとも親等の近い直系尊属)
・配偶者と兄弟姉妹(含甥、姪)
・配偶者のみ
・子と養子(代襲相続人を含む)のみ
・両親(またはもっとも親等の近い直系尊属)のみ
・兄弟姉妹(代襲する甥、姪を含む)のみ
※子供とおじさん、おばさん(亡くなった方の兄弟)が遺産を巡って争うことは原則としてありません。

戸籍の追跡

実際に誰が相続人なのかを調べるために、亡くなった方の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍等を出生から死亡まですべて取得します。
通常はこの段階で両親、子供、配偶者が確認できます。

隠れている相続人?

意外に思われるかもしれませんが、当初想定していた以外の相続人が見付かるケースは大変多いのです。
離婚・夫婦の死別を経験されている方の場合は、古い除籍に子供が見付かることがありますので注意が必要です。
兄弟が相続を想定している場合でも、婚外子(隠し子)が見付かって実は相続権がなかったというケースがあります。
亡くなった方の親が再婚している場合は、本人も知らない半血兄弟が見付かることが考えられるのです。
さらに、先に亡くなっている兄弟がいるとその子供が相続人になりますので、相続人が予想以上の数になることもよくあります。
この段階で調査の手を抜くと、後で隠れていた相続人から相続の回復を請求されて、すべてがやり直しになる可能性がありますので慎重に対応しましょう。

例え法定相続人ではなくても・・・

相続人ではなくても、遺言で「財産の一割を遺贈する」とか「財産の半分を譲る」と指定されていた人(包括受遺者と言います)は、相続人とほぼ同じように扱われ、後の遺産分割協議に参加することになります。

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