2009年12月14日

遺産分割協議

遺産分割協議の進め方

遺産分割協議は全員参加が大原則です。
相続人の確定、相続財産の確定が終わると、いよいよ遺産の分割方法について協議します。
相続財産をどのように分割するかは、遺言書がある場合にはそれに従います。(ただし、相続人全員の協議がある場合は、遺言と違う内容で相続財産を取得することも出来ます)
遺言書がない場合には、誰がどの財産をどれだけ相続するかを相続人間で話し合って決めることができます。
この話し合いを「遺産分割協議」といいます。
遺産分割協議は、通常次のような流れで進めて行きます。

1. 相続人を確定する

遺産分割協議は、相続人全員参加での承認が原則必要となります。
・戸籍謄本を取得して相続人を確定する。
・相続人の中に、未成年の子とその親権者がいる場合には、家庭裁判所に申立をして、特別代理人の選任という手続が必要です。
・相続人の中に行方不明者がいる場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申立てる方法と、失踪宣告の申立をする方法があります。

2. 相続財産の調査

相続財産を調べて財産目録を作成します。借金・クレジット・保証債務などのマイナス遺産も漏れなくチェックすることが大切です。

3. 相続財産の評価

土地、建物、株式などについて、それぞれの評価基準に基づき評価します。

4. 寄与分の協議

被相続人が生存中に、財産の維持や増加に特別に寄与した相続人がいる場合には、その寄与分を先に協議して差し引き、残りの財産について分割協議します。

5. 遺産分割協議

相続税の申告は死亡の日から10ヶ月以内ですが、遺産分割協議に期限はありません。

遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書はモレがないように作成しましょう。
遺産分割協議書には書き方のポイントがあります。

1. 用紙

紙の大きさに制限はありません。

2. 押印

遺産分割協議書が数ページになるときは、相続人全員の契印が必要です。
登記所では、少しの記入ミスでも訂正を求めますので、できれば捨印があった方がいいでしょう。
捨印を押すのを嫌がる相続人がいるときは、チェックして間違いがないことを確認しましょう。
署名の後ろの実印の押印は、鮮明に押印する必要があります。
※遺産分割協議書に限らず、適当に押印する人がいます。
実印を押印する以上、印鑑証明書を付けるわけですから、鮮明に押印しましょう。

3. 不動産の表示

「不動産の表示」の記載は、登記簿(登記記録)に記載されているとおりに記載しましょう。
登記所は、登記簿(登記記録)に記載された不動産の内容でしか、判断しません。

4. 日付

遺産分割協議書の相続人が署名、押印した日付は、実際、遺産分割の協議をした日、あるいは、最後に、署名した人が、署名した日付を記入するようにしましょう。

5. 相続人の住所・氏名

必ず、相続人本人に署名してもらいましょう。
住所、氏名の記入は、印鑑証明書に記載されているとおりに記入することが、後々の紛争予防に役立ちます。

遺産分割協議書の注意点

遺産分割協議は、全員の話し合いがないと無効になります。
遺産分割協議書には決まった書式(書き方)はありませんが、いくつか注意点がありますのでおさえておきましょう。

協議は法定相続人全員で行わなければなりません。

遺産分割協議は法定相続人全員で行わなければ効力がありません。
戸籍調査の上、間違いの無いように注意してください。
全員の協議ですが、『全員が一堂に会して協議する』事までは要求されません。全員が承諾した事実があればそれでよいのです。
現実に、遺産分割協議書(案)を作成し、『この内容でよければ実印を押してください』と他の相続人に持ちかける方法がよく取られます。

法定相続人全員が署名・実印の押印をする。

厳密には署名ではなく記名でもかまいませんが、後々の紛争・トラブルを防ぐためにも署名するようにしてください。
印鑑は実印を使わないと、不動産登記や銀行手続ができません。

財産の表示方法にも注意が必要です。

不動産の場合、住所ではなく登記簿どおりの表記にしてください。
銀行等は、支店名、口座番号まで書いてください。契印が必要となります。
遺産分割協議書が用紙数枚にわたる場合、法定相続人全員の実印で契印してください。
遺産分割協議書には、実印の押印が必要ですが、それと共に印鑑証明書も添付してください。

遺産を確定する

相続財産には遺産分割の対象になる相続財産(いわゆる相続財産)と相続税の課税対象になる財産(いわゆるみなし相続財産)、そしてそのどちらにもならない財産(祭祀財産)の3種類があります。

確認できた財産がどれに当たるかで、扱いが異なりますので注意しましょう。

相続財産

亡くなった方が所有していた家、現預金、有価証券などの一般的な財産のことです。

手持ち動産

主な調査方法

現金、宝石、貴金属、骨董品など 亡くなった方の住まい、別荘等の家捜し、銀行の貸金庫の確認など
銀行預金、郵便貯金、株、債券等の金融資産 預貯金通帳、金融機関・証券会社からの郵便物で目星を付けて窓口で確認。
取引先が広範な場合は住所地近辺の主な金融機関をしらみつぶしに当たる。
住まい、収益不動産、別荘などの不動産 固定資産税納税通知書等で所在を確認後、当該自治体発行の名寄せ帳を取り寄せる

みなし相続財産

・亡くなった方が自分にかけていた子供を受取人に指定してある生命保険の保険金、退職金規定で配偶者が受け取ることになっている死亡退職金など
・取扱い
遺産分割の対象にならないが相続税の対象になる。相続を放棄しても受け取れる。

祭祀財産

・亡くなった方が所有していた墓所、仏壇など祖先を祭るために使われているもの
・取扱い
亡くなった方の指定、地方の慣習、家庭裁判所の審判等により、相続人の誰か一人が受け継ぐ。
相続税の課税対象にならない財産目録の作成
財産調査の結果は財産の名称、所在、金額など、目録にまとめます。また、調査の途中で管理や保全が必要な財産が見付かった場合は、早急に適切な管理・保全の手当てをしておきます。

相続人を確定する

相続人が誰になるのかを、『間違いのないように!』調査してください!

相続人が誰かは民法で決められています。
遺言や死因贈与契約がなければ相続人以外の人が相続財産を取得することはありません。
相続人以外の人はその相続に関しては部外者と言うことになります。

法定相続人

・配偶者

常に相続人になります。

・子(養子含む)

第一順位の相続人になります。子がすでに亡くなっていて、その代襲者がいる場合は、代襲者が第一順位の相続人になります。

・直系尊属

(亡くなった方の父母、祖父母など)
子がない場合は、直系尊属のうち、存命でもっとも親等が近い者が第二順位の相続人になります。

・兄弟姉妹

子及び直系尊属がいない場合、兄弟姉妹が第三順位の相続人になります。兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合、その子(甥、姪)が代襲して第三順位の相続人になります。
※甥、姪が亡くなっていてもその子は相続人になりません。
※配偶者と子(代襲相続人を含む)以外の相続人は、先順位の相続人がいない場合にのみ相続人になります。
つまり、実際に相続人として相続に関係する人の組み合わせは次の形しかありません。
・配偶者と子・養子(代襲相続人を含む)
・配偶者と両親(またはもっとも親等の近い直系尊属)
・配偶者と兄弟姉妹(含甥、姪)
・配偶者のみ
・子と養子(代襲相続人を含む)のみ
・両親(またはもっとも親等の近い直系尊属)のみ
・兄弟姉妹(代襲する甥、姪を含む)のみ
※子供とおじさん、おばさん(亡くなった方の兄弟)が遺産を巡って争うことは原則としてありません。

戸籍の追跡

実際に誰が相続人なのかを調べるために、亡くなった方の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍等を出生から死亡まですべて取得します。
通常はこの段階で両親、子供、配偶者が確認できます。

隠れている相続人?

意外に思われるかもしれませんが、当初想定していた以外の相続人が見付かるケースは大変多いのです。
離婚・夫婦の死別を経験されている方の場合は、古い除籍に子供が見付かることがありますので注意が必要です。
兄弟が相続を想定している場合でも、婚外子(隠し子)が見付かって実は相続権がなかったというケースがあります。
亡くなった方の親が再婚している場合は、本人も知らない半血兄弟が見付かることが考えられるのです。
さらに、先に亡くなっている兄弟がいるとその子供が相続人になりますので、相続人が予想以上の数になることもよくあります。
この段階で調査の手を抜くと、後で隠れていた相続人から相続の回復を請求されて、すべてがやり直しになる可能性がありますので慎重に対応しましょう。

例え法定相続人ではなくても・・・

相続人ではなくても、遺言で「財産の一割を遺贈する」とか「財産の半分を譲る」と指定されていた人(包括受遺者と言います)は、相続人とほぼ同じように扱われ、後の遺産分割協議に参加することになります。

遺産の分割方法

相続が発生して、法要を済ませると、次は遺産の相続を考えなければなりません。
ここでは、遺産の相続の仕方を見てみましょう。
相続の方法には幾つか種類があります。
すべての財産を引き継ぐのか、すべての財産を引き継がないのか、条件付きで相続するのかその手法は様々です。
どのようなかたちがあるのか、相続すべきかどうかをしっかりと判断しましょう。

単純承認

まず、プラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継ぐことを単純承認と言います。
単純承認はこれといった特殊な手続がいりません。
ただし、「相続しません!」「条件付で相続します!」という、ある種の宣言を3ヶ月以内にしなかった場合、自動的に単純承認、つまり、すべてを相続することになります。
ちゃんと覚えておきましょう。

相続放棄

相続財産はすべてがプラスの財産とは限りません。
借金などの債務ばかりのマイナスの財産もあります。
遺産が明らかなプラスであれば、単純承認して良いと思いますが、明らかなマイナスの場合は、「相続をしない」という判断をすることもできます。
それを相続放棄と言います。
つまり、被相続人の財産を放棄し一切の財産を相続しない方法です。
相続人が被相続人の死亡を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出して、それが認められれば相続放棄が完了します。
家庭裁判所で相続放棄の申立が受理されると、その相続人は初めから相続人ではなかったことになります。
ですから、その子や孫への代襲相続もありません。

限定承認

限定承認とは、相続で得た財産の範囲内で借金を返済するという条件で相続を承認する方法です。
財産を清算し、遺産全体がマイナスの場合でも、不足分を支払う必要がなくなる相続方法です。
借金を返して、財産の方が多ければ、差し引いた財産については取得することができます。
限定承認の手続も、相続放棄の宣言と同じく、相続開始を知った時より3ヶ月以内に、家庭裁判所に「限定承認申述書」を提出して行います。
法定相続人が複数いる場合には必ず全員で手続をしなければなりません。

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