2009年12月14日

納税資金の活用

相続税の納税資金の考慮

相続対策でこれまでよく採用された方法に、無理な借金により、貸しマンションやアパートの建築をして財産評価額を下げるという方法があります。
この方法には一定のリスクが伴うため、納付する相続税額を節税する対策は、あまりやり過ぎないようにすることをお薦めしております。
より現実的な問題として検討しなければならないのが、財産評価額を下げる対策ではなく、きちんと納税資金に換価できる資産、不動産を用意しておくことによる、納税資金準備対策です。
換金性を高めた資産などを生前から準備しておき、相続発生後に直ちに換金することで相続税を納付しようとするものです。
特に換金しにくい不動産等をあらかじめ流動化、つまり換金化しやすいような資産構成に代えておくことが代表的です。
例えば、すぐに売却できるような更地で持っておくこと、そして、その間の活用を検討することなどです。
注意点は、相続税課税時点において、納税義務者(特に奥様などの配偶者)に、換金性の高い資金がきちんと引き継がれるような配慮を遺産分割との兼ね合いで「遺言書」等で記載しておくことです。
資産を残す側としては、困りがちなケースを想定して、最低限やっておかなければならないことがこの遺言書です。
換金性の高い資産といっても、保有している土地取引には時間がかかるケースも多く、しかも譲渡所得税等の発生もあります。
物納する場合も物件自体が物納要件を満たしていることが求められ、更に認可手続に時間がかかります。
しかも、物納認可が下りないといったケースもあり、これは大きなリスクです。そこで、相続税の納税のための資金準備をしておく必要性が発生するのです。

納税資金が足りない場合の対策は?

短期の対策

納税資金対策として、よくご提案させていただいている方法をご紹介します。

1. 銀行から借入する
2. 死亡退職金・弔慰金を活用
3. 相続資産の売却
4. 納税資金の生前贈与
5. 延納・物納を利用

ただし、短期的というのは、狙ってそうするのではなく、そうしなければならなかった、ということが大半です。
出来る限り計画的に、長期的な視野で取り組まれることをお薦めします。

長期対策

計画的に取り組めることの代表例が、以下の事項です。

1. 生命保険に加入する
2. 土地活用により賃貸収入を得る
3. 賃貸用不動産を譲渡する

どれも税金と不動産のプロフェッショナルにアドバイスを求めた方が無難な対策です。
信頼できるアドバイザーを探しましょう。

納税資金の過不足分析

必要となる納税資金に対して、相続財産と相続人所有の金融資産(現預金・生命保険金・上場有価証券等)がいくら準備できるかを試算し、相続税を支払う能力があるかチェックしてみましょう。
不足していれば、対策をうつことが必要となります。一般に、相続税の支払能力の判定は、【納税資金÷相続税×100】で求めます。
この比率が100%よりも小さければ小さいほど対策が必要です。

納税資金の不足を解消する方法
1. 節税対策により相続税額を軽減すること
2. 納税資金対策により資金を増やすこと

上記、両面からのアプローチが必要です。
納税資金対策では「生命保険」の上手な活用が最も有用です。
終身保険の有期払いで加入すれば、確実に死亡保険金を相続税の納税資金に充当できます。
支払保険料は相続税の分割前払いと考えることもできます。これにより、所有土地等を譲渡または物納することなく、相続税の納税を完結させることもできます。

生命保険などによる対策

正味財産額が3億円以下で、生命保険加入が可能な年齢と健康状態であれば、生命保険の加入だけで相続対策は十分といえます。
大きな節税効果は期待できませんが、少ない保険料負担で必要な相続税の納税資金を準備できれば「小さなコストとリスク」で「大きな効果」を上げることができます。
すなわち、相続財産を無傷で残すために生命保険金を活用し、死亡保険金で相続税をカバーすればよいのです。
相続税の納税資金を生命保険だけで準備することは理論的には可能ですが、被保険者の年齢が高いことからも保険料も相当な金額になります。保険料負担に耐え得る限度という視点から判定しても、課税価格が「3億円」以下の場合に生命保険だけで納税資金の準備が可能と考えられます。

生命保険を活用する

生命保険活用納税資金対策相続が発生した場合、「突然多額の相続税を納付しなければならない。しかし遺産のほとんどは不動産で現預金は少ない」といったケースにおける相続税の納付財源をどう調達するか、比較的簡単な手続きで有効な対策が生命保険への加入です。
人が死亡した場合に突然襲ってくるのが相続税の負担なら、人が死亡したことにより突然現金が入ってくるのが生命保険です。
では、納税資金対策としての生命保険の契約についての注意事項を説明しておきましょう。

1. 保険金額の決め方

万一、相続が発生した場合、どれぐらいの相続税となるのか、この税額計算が必要です。
そして、物納や延納、あるいは不動産の売却といった方法を用いてどれぐらいの税額を納付することが適当かを考慮しつつ、生命保険金で納付したい額を設定したうえで、契約する保険金額を設定しておきましょう。

2. 受取人の決め方

現在あなたの契約しておられる保険証券を一度確認してみてください。受取人はどなたになっていますか?
配偶者になっているケースが多いと思います。
しかし、配偶者の軽減措置がある関係上、相続の多くの場合、配偶者が多額の相続税を負担するケースはほとんど存在しないのではないでしょうか。相続税の納付で困るのは子供達ですから、受取人は「子供さん」とした保険契約がポイントです。
配偶者である妻が受け取った生命保険金で、子供の負担すべき相続税を納めると、妻が子供に「贈与」したことになり、贈与税が課税されることがありますので注意が必要です。

3. 二次相続への備え

配偶者である妻の死亡時に起こる二次相続の場合の相続税の税額計算も、ぜひとも実行しておいてください。そして、奥様を被保険者とし、子供を受取人とする生命保険も必要です。
ただし、保険契約者を奥様とする場合には、奥様に保険料を毎年あるいは毎月掛けていくだけの収入が必要です。
遊休地を活用してショップ経営を始めたり、アパート経営の専従者とするのも方法でしょう。

4. 保険加入の時期

生命保険は、契約時に被保険者の年齢が高くなるにつれ保険料の負担が高くなります。
一年でも早く加入すべきです。
また、保険契約時には健康診断が必要ですが、現在50歳以上の方で、健康上、無条件で保険に加入できた方は50%位であるとのデータを拝見したことがあります。若くして健康なうちに終身保険に加入をしておくというのがよいでしょう。
ただし、お父上が80歳以上であるとか、健康上すでに故障が生じている場合には、被保険者が子供、契約者が父上とした保険契約も次項で述べるように有効です。
以上が納税資金対策としての生命保険についての解説ですが、生命保険はこれ以外にも相続税対策として有効な機能がありますので、ぜひご紹介しておきたいと思います。

生前贈与

生前贈与とは?

生前贈与とは、生前に個人の資産を家族等に譲り渡しておく(贈与する)ことです。
自分の財産を、自分の意思でもって引き継いでもらいたい人に渡すことができ、うまく活用すれば、相続税を減らす効果も期待できます。

贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与により取得した財産(複数からの贈与によって財産を取得している場合はその合計)を対象にして、翌年2月1日から3月15日までに 申告・納付します。

贈与税の基礎控除

贈与税は1人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。

相続開始前3年以内の贈与財産については、相続財産に加えて相続税を計算し、その代わ りに、 前に納めた贈与税額はその相続税額から控除されます。
つまりは死亡時に近い贈与に は、相続税を課すという建て前になっています。

ですからできるだけ早い相続対策が必要になります。

生前贈与による相続税対策

相続税の節税のポイントは、「贈与税の負担をいかに最小限に抑えて、財産を生前に贈与しておくこと」と言われています。

年間1人当り110万円の贈与税の基礎控除を活用します。

中には110万円では、相続対策には少なすぎるという方もいらっしゃいます。

しかし、1人ではなく、複数の配偶者に贈与していけば、金額は大きくなります。
たとえば、配偶者と3人の子供に、それぞれ110万円ずつ10年間贈与していけば、無税で4,400万円までの贈与が可能になります。

ただし、こうした「連年贈与」は「定額贈与」とみなされる可能性があります。
たとえば、毎年110万円ずつ贈与した場合、「向こう10年間にわたり合計1,100万円を贈与するという権利を最初の年に贈与した」と税務局にみなされ、その評価額を課税対象に取り込まれ、高額の贈与税が課される恐れがあります。

こういった状況を回避するには、年によって贈与する財産の内容や金額を変えるなど不規則性をもたせるという方法があります。
このほかにも、「契約書をつくって贈与する」「預金口座からの資金の出し入れにする」などの方法もあります。
贈与の開始時に確定した権利が発生していたとみなされないように、証拠を残す工夫をすることが必要です。

死因贈与契約

死因贈与とは?

死因贈与とは、贈与者の死亡によって、効力を生ずる贈与です。
いわゆる、「俺が死んだら、お前にやるよ。」というような契約です。
遺言が、遺言者の単独行為であるのに対して、死因贈与は、贈与の一種で、二当事者間の契約です。
また、贈与者の死亡によって効力を生じる点で、遺贈と類似し、民法では、死因贈与は遺贈に関する規定に従うとされています。

死因贈与の撤回については、遺言の撤回に関する民法の規定のうち、方式に関する部分を除いて死因贈与の場合にも準用されます。
最高裁では「死因贈与は贈与者の死亡によって贈与の効力が生ずるものであるが、かかる贈与者の死後の財産に関する処分については、遺贈と同様、贈与者の最終意思を尊重し、これによって決するのを相当とするからである。」と述べています。
つまり、死因贈与契約は契約ではありながら、贈与者が一方的に撤回することが可能で、また、この撤回が遺言の方式によってなされる必要はないということです。

死因贈与と登記

不動産の死因贈与については、所有権移転請求権保全の仮登記をすることができます。
死因贈与契約書を公正証書で作成し、その中で「贈与者は、贈与物件について受贈者のため所有権移転請求権保全の仮登記をなすものとし、受贈者がこの登記手続を申請することを承諾した。」旨の記載をしておけば、公正証書の正本又は謄本をもって受贈者がこの仮登記を単独申請ができるので便利です。

また、死因贈与も遺言と同様に、執行者を選任することができます。
執行者の指定がない場合は、所有権移転の登記手続の際に、贈与者の相続人全員を登記義務者として申請することを要しますので、手続が煩雑になります。したがって、この場合は、執行者を指定しておいた方がよいでしょう。

*必ず死因贈与契約を公正証書にしなければならないわけではありませんが、贈与者の死後、受贈者と贈与者の相続人間で摩擦が生じやすいので、公正証書で作成しておく方が安全といえるでしょう。

負担付死因贈与とは?

一般に負担付贈与とは、受贈者が対価というには足らない程度の反対給付をする債務を負う贈与です。
たとえば、受贈者は、贈与者の生存中の生活の世話を負担する代わりに、贈与者の死後に、何がしかの財産の贈与を受ける場合が考えられます。

死因贈与についても、負担付贈与を行うことができます。
上記で、遺言の撤回に関する民法の定めは、方式に関する部分を除いて死因贈与の場合にも準用される旨記載しましたが、負担付死因贈与については、受贈者が約定に従い負担の全部又はそれに類する程度の履行をした場合においては、特段の事情がない限り撤回ができないため、注意が必要です。

また、受贈者の立場から見れば、負担付死因贈与契約締結時に、負担の内容を明確にして、それを誠実に実行するならば、遺言よる遺贈でもらうより負担付死因贈与契約の方が確実なのかもしれません。

遺言状を作成する

遺言書の書き方

遺言は、それぞれ遺言の種類によって法律で書き方が決められています!

せっかく書いた遺言書に不備があると認められません!

自筆証書遺言と公正証書遺言の書き方について説明いたしますが、きちんとした遺言書を作成したいのであれば、やはり司法書士などの専門家にご相談することをお勧め致します。

自筆証書遺言の書き方

・全文を自筆で書くこと
・縦書き、横書きは自由で、用紙の制限はありません。筆記具もボールペン、万年筆など何を使用しても構いません。
・日付、氏名も自筆で記入すること。
・捺印は認印や拇印でも構いませんが実印が好ましいでしょう。
・数ページに渡る場合は、全てのページに契印がされていること。
・加除訂正する時は、訂正個所を明確にし、その個所に捺印の上署名すること。

公正証書遺言の書き方

・証人2人以上の立会いのもと公証人役場へ出向くこと(公証人に来てもらうことも可能です)。
・遺言者が遺言の内容を公証人に口述すること。
(聴覚・言語機能障害者は、手話通訳による申述、または筆談により口述に代えることができます。)
・公証人がその口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、または閲覧させること。
・遺言者および証人が筆記の正確なことを承認したうえで、各自が署名捺印すること。
・公証人がその証書を法律に定める手続きに従って作成されたものである旨を付記して、これに署名捺印すること。

証人・立会人の欠格者について

遺言執行者は、証人になることが認められていますが、未成年者、推定相続人、受遺者及びその配偶者、及び直系血族は証人にはなれません。また、公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び雇用人も同様です。

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